退屈に殺される
「ロックバンドはライブをやらないと心が死ぬ」
2020年、田淵は度々そう綴っていた。
わたしは小学生のとき「アリーテ姫の冒険」という本が好きだった。
アリーテ姫は強欲な父親のせいでわるい魔法遣いに嫁ぐことになり、わるい魔法遣いの命令で地下室に閉じ込められたり、毒ヘビがひしめく迷いの森へ魔法の井戸の水をくみに行ったりする。
助けに来てくれる王子様はいない。
しんせつな魔法遣いが3つまで願いを叶えてくれる魔法の指輪をくれる。アリーテ姫は地下室から出たいとか毒ヘビをやっつけて欲しいとか、自身に降りかかる困難を取り除くために魔法は使わない。魔法で絵の具を手に入れる。
地下室に閉じ込められているあいだ、壁に絵を描いて過ごせば退屈せずに済むと考えたから。
「アリーテ姫の冒険」は1989年に「待ってるだけのお姫さまはもう古い! かしこさと勇気 女の子ならそうこなくっちゃ」というコピーをさげて出版された。
(その後一度絶版されるのだけど、2018年にクラファンが成功して復刊する)
いまとなっては物語で描かれる女の子が勇気をまとって華麗にはばたくのはふつうのこと。(だってそれが永遠不滅プリキュアだからね)
女の子のあるべき姿は「アリーテ姫の冒険」出版当時とは変わったことだろう。でもアリーテ姫がもうお役御免かといえばそうではない。
閉じ込められていると感じることが多くなった。
助けに来てくれる王子様はいない。
願いを叶えてくれる指輪もない。
それでも、退屈に殺されずに済む方法をみつけなればいけないのだから。
わるい魔法遣いの城で働く料理人のアンプルさん(CV: 高山みなみ)と友だちの小さいヘビがシュールで愛しいから読まれたい。
チェケ…👇